王地(おうち)に生れたれば身をば隨(したが)えられたてまつるようなりとも、
心をば隨えられたてまつるべからず。
(1 54歳 2 建治元年 3 身延 4 1053頁)
北条氏の統治する国に生まれたから身は国法に随うようであるけれども、心だけは随うわけにはいかない。
我が門家(もんけ)は、夜は眠りを断ち、昼は暇(いとま)を止(とど)め之を案ぜよ。
一生空(むな)しく過ごして万歳(ばんざい)悔いること勿(なか)れ
(1 56歳 2 建治3年 3 身延 4 1373頁)
我が一門の人々は、夜は眠る時間を惜しみ、昼間は少しの暇間(ひま)な時間であっても無駄にせず、この問題について充分に学び考えるべきである。そして一生を空しく考えることもせずにすごしてしまって、あとで悔いを万歳にまで残すようなことがあってはならない。