去る9月9日に95歳で逝去した母親の遺品の中から、

35年前の母の誕生日に速達で送った写真と手紙が出てきた。

そしてすっかり忘れていたが、たくさんの記憶が鮮やかに蘇ってきたのである。

昨今はメールやラインで事が足りるので、自筆の手紙は誠に貴重なものであると思う。

 

当時は30歳で池上本門寺の随身生として修行に入った1年目であった。

封筒には検閲された跡が残り、茶色くなった便箋には筆ペンで書きつけた文字が今も微笑んでいる。

そして前年のその頃、インドを一人旅していた様子を事細やかに綴っている。

 

その年、池上本門寺では初めての試みとして「LIVING BUDDHISM」と題して、

在日外国人の方を対象に仏教の体験と講義の合宿が行われた。

全てが英語で行われれるので、随身生の中で外人アレルギーの無い

自分がお手伝いをさせて頂いたのである。集合写真のみんなの笑顔が懐かしい。

 

最後に「お体にご自愛の程お願い申し上げます。昭和63年11月18日 お誕生日に寄せて」

という手紙は結ばれている。

光陰矢の如し、35年が過ぎて母を送ったが、この手紙は今も息づいている。