島根県西部の浜田市は、人口48,485人(令和7年1月現在)の高齢化と過疎の進む地方都市である。市内の何ヶ所かに「まちづくりセンター」の真新しい看板を掲げた建物がある。実態は従来の公民館の呼び名を変えた施設である。それを見た時に何かこの街の行く末を案じてしまったのは何故であろうか。
龍泉寺は日蓮宗の寺院である。毎年7月の最終土曜日に「清正公夏祭り」を開催し、境内に舞殿を建て石見神楽を奉納してたくさんの家族連れで賑わう。その中心となる演目が「清正公の虎退治」だ。これは大正時代の初めに当時の住職が法華経の守護神となった加藤清正公の舞を、長澤社中と一緒に創作した独自の演目であり、数ある石見神楽の社中のなかでも長澤社中の目玉演目となっている。
龍泉寺は仏教寺院として夏祭りの他に、お正月の祝禱会、節分星祭り、春秋の彼岸法要、お盆の施餓鬼法要、お会式(宗祖の報恩法要)、永代法要などの行事を神聖な本堂で檀信徒を中心に行っている。その他に実績として「夏休み寺子屋」(12回)、石央文化ホールでの「はまだ未来文化祭」(2回)、市内をテーマを決めて探検する「はまだdeシャルソン」(3回)、「はまだを明るく照らし隊」の地域防犯活動(12年)を実施してきた。
これからの「街づくり」の為に必要なことは、浜田の子供たちや小中高の学生や、また全国から集まる県立大学生をはじめ、たくさんの人が集い笑顔で交流して、みんながこの街に住みたい、また訪れたいと思えることである。そのための「場」こそが龍珠会が目標とする「多目的ホールを備えた龍珠会館」である。ここは様々な文化事業を行う場所として、宗教活動をする所ではない。いつでも利用可能で、市内社中の神楽の練習や上演、子供神楽と高校や大学の学生サークルの神楽など。またヨガやハワイアンダンスの教室。コンサート・子供落語・カラオケ大会等々、アイデア次第で様々な集いが可能となる。
仮に現在の龍泉寺の旧会館庫裡を改築し総二階建ての龍珠会館を建設するには、かなりの資金が必要となる。これを実現するには、檀信徒にご理解と協力を頂くだけでなく、広く一般の方々にもご賛同いただき、可能であれば文化事業支援の各種助成金、更にはクラウドファンディングそしてふるさと納税の利用など、龍珠会の皆さんのお知恵をいただかなければ不可能である。
浜田市は以前から神楽伝承施設の設置を検討しながらいまだ実現していない。今年秋の市長選挙及び市議会議員選挙の争点も主にそのことになるであろう。しかし神楽伝承施設の運営主体と継続の資金面の課題をクリアするには傍目にも困難に思えてならない。
最後に、加藤清正公が退治する「虎」とは私たちの心の中の魔物のことなのである。