1987年10月27~28日 ダラムシャラーにて

 結局ここのチベットホテルで3泊することになった。やはりじっくり2日はいないと何かあわただしいし、ここは居心地も中々良い。特に何かがあるわけでないが、眺めは良いし静かなところ。まるで「インド」を感じさせない。

 

 1日目の夕方、本屋のマスターに教えてもらいチベット仏教の寺院へと行く。丁度、夕方の礼拝の時間で、街の人々も手に数珠を持ち行き帰りの人が多い。寺院では、体を何度も地面にこすりつける五体投地をしている。帰りがけに、僧たちの吹くラッパの音が高く低く谷に響き渡る。その音が体に沁み涙が込みあげる。

 

 2日目の朝は6時に起き、再び寺院へ。朝の勤行が始まった。お経の響きは同じである。遥か陸と海を隔てて同じ教えを唱えているのだ。

 

 チベットパンとジャムで朝食をとった後、少し木立の道を歩き、水が湧き出て陽のあたる場所で、持ってきた法華経の「生きるための28章」を読む。筆で書き記されたその教えが静かに心に湧き出るのは何時であろうか。急ぐことはない、これからがそのための人生であるから。

 

 読み終えた本は、本屋のマスター(と言っても2畳ほどのスペース)に日本人がいたらあげるように頼んで渡す。昼食はチョウメン(焼きそば)とチャーイ、りんご1個。西洋人の来るレストランで新聞でもめくりながらゆっくりとる。日本人ツーリストは他にいない。何か西洋人の彼らどうしがお友達になっていて、取っ付きにくいものを感じるが、まあ、さして問題でない。そのうち会話が聞こえてくるようになるでしょう。

 

 明日の朝は午前4時発のデーラドゥン行きのバスでここを発つ。Café Chambhara にて最後のチャーイとドーナツを楽しむ。